遺体のある葬儀ができるだけ幸せだ。

かつて彼らの友人や親がそうだったように
遺体のない葬儀は珍しいものではない。

戦火で大切な者を亡くし、
遺体も見ずに死を受け入れるなんて
到底できないことだろう。

きちんとした供養もされず、死んだ者も浮かばれまい。

だから、
遺体のある葬儀ができるだけ幸せなのだ。



棺に収められた女性は、まだ若かった。

メイリン・ザラ。
享年21。


彼女の葬儀は、
プラントの小さな協会でひっそりと行われた。

オーブで散った彼女をオーブに埋葬したい、と代表首長は言った。
だが、アスランは断った。

「今度こそ、姉や仲間と一緒にしてやりたい…。」

こうして、彼女は亡き姉の隣に葬られることになった。


葬儀はプラント。
オーブにいる友人達は多忙のために出席しなかった。
彼女の葬儀は、夫と牧師の2人だけで執り行われた。

「メイリン…」

棺の中で眠るメイリンは、綺麗だった。
新婚時代に飽きるほど見ていた、彼女の寝顔。

わずかに微笑を浮かべている頬に、そっと触れる。
その冷たさが、悲しかった。

自分のロケットペンダントを外し、
眠るメイリンの手に握らせる。

お互いにペンダントを着け合った、遠い日々。
アスランがペンダントを着けてあげると、いつも彼女はくすぐったそうにしていた。
あの時の彼女の楽しそうな笑い声が思い出され、余計に切なくなる。

「メイリン…」

もう泣くまいと決めていた心が、いとも簡単に崩れた。

とめどない涙が頬を伝い落ち、
メイリンの頬を濡らす。

「ごめん…ごめんな…!」

牧師の見守る前で、
悲しみに暮れる夫が亡き妻にかけた最後の言葉だった。