まったくショックではない、と言ったらウソになってしまいます。
けれど、今は……




最近回数が増えていく一方の会議がようやく一段楽して。
なんとか自室に辿り着いたものの、眠る気がしない。

軽くシャワーを浴びていると、部屋のドアが開きました。
確認のコールもなしに、セキュリティも万全のドアが突然開くということは……

「ラクス」

ああ、やっぱり。キラ、あなたでしたのね。


いつもなら嬉しくて飛び出していくのに、今日は少し気が重い。
いつもなら笑顔でいてくれるあなたも、今日は表情が優れない。

目を赤く腫らして、
部屋に入ってきてもどこかぎこちない様子で…。

もしかして…

「アスランが…死んでしまったことですか?」


バスローブを着ながら私がそう問うと、
キラの肩がビクリと震え、大きな瞳から涙があふれ出てきました。

…あぁ、やはりあなたは泣きに来たのですね。

泣きじゃくる子供を母親が抱きしめるように、私がキラを抱きしめると、
キラは安心したように力を抜いて涙を流し始めました。

…お泣きなさい。あなたは泣くことができるのですから。




「ラクス、きみはアスランが死んで……悲しくないの?」

ひとしきり泣き終えたキラが、濡れた瞳を私に向けました。


…悲しくない?


婚約者として出会ったアスラン。
彼が先日の戦いで命を落としたこと……。


「そんなことありませんわ。」
「でも、泣かないね。」


だって…


「今は、泣いているときでは無いでしょう?」


キラがいぶかしげな顔で私を見つめます。
私は笑って、キラから離れました。



「私は、統一地球圏連合のラクス・クラインなのですから。」


窓の外に広がる景色。
そこに暮らすたくさんの人々。


彼らのためにある私だから。



「そうでしょう、キラ?」







たとえ悲しくても、涙は流さない ――