「あれぇ、何か絡まってるぞ」

トゥルージャスティスを討ったデスティニーブラストは、リヴァイヴで整備をされていた。
その整備の途中、シゲトは何か金属の鎖がデスティニーの膝間接部分に絡まってることに気付いたのだ。
なんとか腕を伸ばし、引っ張り出す。

「どうした、シゲト。」

エンジニアのサイが声をかける。
まだ実験段階の多い機体だ。何か少しでも問題があると困る。

「あ、いや、こんなものが絡まっててさあ。」

サイ、そして少し離れた位置からそれを黙って見守っていたシンは、シゲトの手にしたものに首をかしげる。
それは、あちこち焦げ、ヘッドは歪み、鎖の千切れているロケットペンダントだった。

「漂流してたのが絡まったのか?」
「さあ…?」

サイが工具でロケット部分を開ける。
覗き込んでいたシンは、中のものを見て息を呑んだ。

「アスラン…メイリン……!」

そこにいたのは、自分の手で討った2人だった。
無邪気な2人の笑顔が、彼らを討った自分を見つめている。
シンはいたたまれなくなって目をそらした。

「…爆発したときに……飛んできたのか。」

サイはそう言ってロケットを閉じ、シンの手に握らせる。
シンはぎょっとしてサイを睨んだ。
討たれた者の形見を討った者が持つ…そんなことがあるのか?
だが、シンの視線を真っ直ぐに見返しながら、サイが言った。

「お前が持っておけ。」

それだけ言うと、シゲトを連れてその場から立ち去る。
そのまま元の作業に取り掛かる2人を、シンは遠くから眺めるしかなかった。

シンは、恐る恐る、手の中のロケットに視線を戻す。
そして、もう一度ロケットを開いた。

結婚式後の写真だろうか。アスランとメイリンは本当に幸せそうな笑顔をしている。
とても、統治のためとはいえ大量殺戮を繰り返してきた人間のようには見えない。
すごく純粋に、互いを思い合う、ごく普通の夫婦に見えた。