パイロットロッカーで、アスランは一人着替える。
部下たちは既にモビルスーツで待機中。あとは隊長であるアスランだけだ。

アスランはスーツを着ようと身をかがめる。
ふと、首から提げた物が視界で揺らめいた。

そっと、それを手に取る。
自分のではない、メイリンの身につけていたロケットペンダント。

ロケットの部分を開けば、そこには幸せだった頃の2人がいた。
眩しいほどの笑顔を見せる、写真の中のメイリン。
この笑顔を、アスランは長く見ていなかった。……もう、見ることも叶わない。

「メイリン……行ってくるよ…」

艦の中は、恐ろしいくらいに静かだ。
嵐の前の静けさ、というやつだろうか。

「キミの仇を討つためじゃない。…キミの守ろうとした世界を…守るために。」

これからアスランは戦いに出る。
きっとメイリンを討った相手 ― シン・アスカ ― とも戦うことになる。

だが、妻を殺された夫としてではなく、
平和を守る者として、争いを生む者を撃ちに行くのだ。

復讐なんて、メイリンは望んでいないだろう。
それよりも彼女の守りたかった世界を、自分も命をかけて守りたい。
この平和な世界を守ることが、メイリンへのせめてものはなむけになることを信じて……。

決意を新たに、アスランは胸のロケットを強く握り締める。
ペンダントヘッドと左手の結婚指輪が擦れ、微かに金属の擦れる音がした。